「わっ、あったか~い」
名前を呼ばれて何だと思って行ってみれば、アイツはひょいっと俺を抱き上げた。
手の中の俺を腕で抱え込むと、そのまま頬を摺り寄せる。
俺の体に顔を埋めるようにして、込める力が強くなった。
・・・オイ、何なんだよ、一体。
「ふかふかで気持ちいい~」
・・・意味わかんねぇし。
「みんなもおいで。だっこしよう?」
俺を抱えていないもう片方の手で、モンスターボールの中のヤツらを呼び出した。
単純なコイツらしい、ポケモンの体温で暖をとるつもりなのか。
出てきたヤツらは皆、コイツにぴたっと体を寄せてきた。
その中で、俺だけ一人、コイツの腕の中。
触んじゃねぇよ。撫でんじゃねぇよ。
毛並みが乱れんだろ。
てか、苦しいっつうの。
寒いんなら、他のヤツらを抱いてろよ。
懸命に脱出しようと動いていれば、
後ろで馬鹿デカイ図体のヤツが翼を広げて
俺ら全員を包み込んだ。
突き刺すような冷風が、完全にシャットダウンされた。
「え?あっ、風が来なくなったよ。ありがとう~!」
己が主に礼を言われたヤツは大げさに尾を振りたて、
バッサバッサと盛大な音を立てて嬉々とする。
・・・・・・気に入らねぇ・・・。
「あっ、」
一瞬、力が緩んだのを見計らって、俺はついに腕の中から抜け出した。
とたんに吹き付ける風に思わず身震いするが、コイツの力は借りねぇ。
ましてや、後ろのデカブツなんてもってのほかだ。
「ねぇ、だっこのほうがあったかいよ?」
すぐさま伸びてくる手を俺はすばやく交わす。
別に寒くなんてねぇよ。
「ぎゅっ、ってするの、嫌?」
ああ、嫌だね。
「・・・可愛いなぁ」
・・・・・・言いやがった。
機嫌が悪い時には、俺は相当凶悪な顔をしているらしい。
他のポケモンたちが皆一様に怯えた様子で俺を見ている。
あのな、あんまり俺をナメんじゃねぇよ。
たしかに、体格はよくねぇと思うぜ。
けどよ、俺のこの牙がお前には見えねーのか?
祖先はこの牙と爪で狩りをしてたって話だ。
今はもうだいぶ薄まってるかもしんねーけど、
俺にもその血が流れてんだよ。
これが俺の最大の武器なんだよ。
空を飛べる大きな翼も、海の上を走る広い背中もない、俺には、
あらゆることからお前を守るなんてことは出来ないのだろう
でもせめて、俺の持てる全ての力で
お前を守ってやりたいと思うから
俺はお前の声を待つ。
お前が俺を選び、俺に命令を下したならば、その時は。
俺が、俺がこの牙で。
お前の敵を、噛み砕いてやる。
また来た、突発ポケモン夢(・・・のつもりだったんですよ!)
いつぞやに書いたこばなし、「大きいってことは」の対で作ったお話。
あちらがのんびりとしたいい子ちゃんだったので、こちらは気が強い生意気系で。
気は優しくて力持ちと、ちっちゃいけど負けん気は人一倍、みたいな(笑)
大きい子は小さい子が、小さい子は大きい子がうらやましいのです。
でも大好きなご主人様は、きっとそれもわかってる。
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